外壁塗装の塗料には様々な種類がありご自身で選ぶのが難しいため、人気ランキングや訪問販売でおすすめの塗料を言われるがままに契約して失敗したという話はよくある話です。
失敗を避けるためには、塗料の種類や選び方の知識をご自身で知っておくことが重要になります。
塗料の種類(どのような分類方法があるか)と合わせて特徴、単価、耐用年数、選び方などをまとめてお伝えします。
- 塗料の種類や選び方は外壁塗装の満足感に直結
- 人気の塗料が必ずしも正解ではない
- ご家族やお家の状況に合わせた塗料選びが鍵
外壁塗装のランキングやおすすめではシリコンなどが人気ですが…
まずはじめに外壁塗装の人気ランキングやおすすめではシリコンなどの名前が上がることが多いですが、ご自身の状況によっては適さないかもしれません。
「おすすめを知りたい」と考えるのは自然なことで、自分より詳しい人の意見を聞き選択を早くできるメリットもあります。
シリコン塗料自体も悪いものではなく、実際によく使われており予算と耐用年数のバランスに優れています。いわゆる無難な塗料です。
ただ、家庭の事情で今後住み替えをするかもしれなかったり、予算が少ないから今回は安く済ませたいと考えていたり、終のすみかなのでしっかりとした塗装を考えていたりするケースでは適さないこともあります。
つまり、ご自身の状況や考え、家の状況によっても最適な塗料は異なるということなのです。
塗料の種類や特徴、単価、耐用年数などと合わせて選び方を知ることは満足いく外壁塗装には欠かせません。そのための基礎知識をお伝えしていきます。
外壁塗装の塗料の成分の詳細
外壁塗装の成分は主に3種類の成分で構成されています。
- 樹脂
- 顔料
- 添加剤
この3つから塗料はできています。
また、これとは別に塗料を塗りやすくするためや強度をあげるために混ぜる溶剤や硬化剤があります。
樹脂には塗料の耐久度を決める重要な要素です。アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素があります。顔料は塗料の色を左右する成分で、添加物は塗料に機能を付与するために配合されます。
塗料の種類や分類とともに詳細をお伝えします。
外壁塗装の塗料の種類(分類)と単価や耐用年数
外壁塗装に使われる塗料の種類(分類)と単価の費用相場、耐用年数をお伝えします。
外壁塗装の種類は以下の通りに分けられます。
それぞれどのような塗料があるのか詳しくお伝えします。
樹脂による分類と単価や耐用年数
塗料の種類 | 耐用年数 | 1㎡あたりの価格 |
---|---|---|
アクリル塗料 | 5年〜7年 | 1,400円〜1,600円 |
ウレタン塗料 | 8年〜10年 | 1,700円〜2,200円 |
シリコン塗料 | 10年〜15年 | 2,300円〜3,000円 |
フッ素塗料 | 15年〜20年 | 3,800円〜4,800円 |
外壁塗装の塗料の種類の主流となる分け方は樹脂による分類です。単価と耐用年数については上記の表をご覧下さい。
の4つのグレードがあります。
最近では使われることが少ないですが、アクリル塗料やウレタン塗料は以前は主流な塗料でした。外壁のデザインを比較的短いスパンで変えたいのであればアクリル塗料が向いています。
また、アクリル塗料より耐用年数が長いものがいいけれど今回は予算を抑えたいというお考えであればウレタン塗料が選択肢です。
耐久重視ならシリコン塗料やフッ素塗料がマッチします。フッ素の方がグレードが高くスカイツリーなど住宅でない建築物にも使われるほどの耐久性があります。
これらの塗料は機能が付与されることも多いです。
機能による分類と単価や耐用年数
塗料の種類 | 耐用年数 | 1㎡あたりの価格 |
---|---|---|
ラジカル制御塗料 | 12年〜16年 | 2,500円〜3,000円 |
遮熱・断熱塗料 | 10年〜20年 | 2,200円〜5,500円 |
光触媒塗料 | 15年〜20年 | 4,200円〜5,000円 |
無機塗料 | 20年〜25年 | 5,000円〜5,500円 |
機能によって分類される塗料の耐用年数と単価を表にしました。こちらも重要な分類で、特に質のいい塗装を検討している方は調べていると必ず出会う情報です。
の4種類があります。また、メーカーオリジナルの呼称などを含めると様々な種類が出ています。
機能による分類なのでベースとなる樹脂は様々で、シリコン塗料であると同時にラジカル制御塗料でもあるといったことが起こり混乱しやすいため注意が必要です。
ラジカル塗料はシリコンとフッ素の間のグレードとして日本ペイントというメーカーが初めて作った塗料です。ラジカル=劣化因子のことで、劣化しにくい機能を付与されているため、耐用年数が長くなります。
遮熱・断熱塗料は屋根に主に使われる塗料で熱の反射や伝導率を低下させて、室内を涼しくしたりエアコン代を節約できます。細かく分けると遮熱のみ、断熱のみ、両方の機能を持つ塗料があります。
光触媒塗料はセルフクリーニング機能や空気の浄化機能があり、汚れを浮かして雨水で落とす機能をつけたことで耐候性を上げ耐用年数を伸ばした塗料です。
無機塗料は有機物である樹脂が光などで劣化するのに対して炭素を含まない無機物を主成分にすることで非常に劣化に強い塗料です。無機物はガラスやレンガなどを構成する物質です。
また、複数の機能を持ったハイブリッドな塗料もあります。
塗料の伸びによる分類
塗料の性質は主成分の樹脂に依存するため、比較的硬いシリコン塗料はモルタルなどひび割れしやすい外壁材に向かないなどのデメリットがあります。
このデメリットを解消するために『弾性』という特性を付与して伸びをよくした塗料があります。
添加剤として硬化剤を混ぜて弾性を持たせるタイプ、そのまま使えるタイプがあります。弾性にも微弾性と通常の弾性とレベルを分けて出しているメーカーもあります。
これは塗料と外壁の相性の兼ね合いがあるためです。例えば、サイディングは弾性が高い塗料を使うと膨れてしまう原因になるため、使われないことが多いです。
また、弾性が高いとクラック(ひび割れ)しにくくなる一方でクラックに気づきづらくなり、塗料の劣化がわかりにくくなるため一長一短ではあります。
使用方法による分類
分類 | 使用方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
1液型 | 溶剤を混ぜ使用 | 価格が安い 作業性が高い | 耐久性は低め |
2液型 | 硬化剤と主剤と溶剤を混ぜ使用 | 耐久性が高い 状況に合わせられる | 作業性が低い 価格が高い |
塗料には1液型と2液型があります。
1液型は一斗缶に塗料が入っていて溶剤を混ぜすぐに使えるため、作業性が高い(職人さんが塗りやすい)のが特徴です。そのため、1液型は2液型と比較して職人さんの腕に外壁塗装の成功が左右されにくくなります。
価格や耐久性については近年では1液型でも高いグレードのものでは耐久性が高いものも出てきていますので、あくまでも同じ樹脂グレードだった場合の話になります。
2液型は主剤と硬化剤を混ぜて使います。1液型は余っても保存がききますが、2液型は硬化剤によって塗料が比較的短い時間で固まり始めるため混ぜたら使い切らないといけないという違いもあります。
混合、撹拌(かくはん)の作業が必要で保存がきかない分、2液型は職人さんの腕が試される塗料なのです。
真面目で使いこなせる技術力のある職人さんであれば作業性が低くてもお客さまのことを想って耐久性が高い2液型の方が好みなことが多いです。
また、2液型は塗装する日やその地域の気候に合わせて硬化剤の量を調節することができるため、状況に合わせた塗装ができることがメリットです。
光沢による分類
塗料にはツヤありとツヤなしがあります。
ツヤありの中にも7分、5分、3分とツヤの度合いに応じて種類があります。
光沢はデザインとしても好みもあると思いますが、注意しないといけないのは光沢によって耐久性に差が出ることです。
ツヤがある方が日射反射率が高いため、紫外線に強く耐久力があります。そのため、デザインとしてマットで落ち着いた仕上がりが好きということでなければ極力ツヤありを選んだ方がいいです。
塗装を依頼する際には3分、5分などのツヤの度合いで依頼するよりも「明るすぎるのは苦手なので、少し抑えめでほどよい仕上がりに」などニュアンスを伝えるようにした方がイメージに近づきやすくなります。
顔料による分類
塗料には顔料を入れたエナメル塗料と入れないクリアー塗料があります。
エナメル塗料に含まれる顔料は色をつける着色以外に日射反射による紫外線への耐性、弾性などにも影響してきます。
外壁塗装ではクリアー塗料を使う場面はそこまで多くありません。
塗料の顔料や色で重要なのは色が白に近い方が太陽の光を反射するため紫外線に強くなる点です。逆に黒は一番日射反射率が悪いため、紫外線の影響を受けやすくなります。
塗料の種類にもよりますが、白ではおおよそ80%前後の反射率に対して、黒は30%前後と開きがあります。
性質による分類
塗料には水性と油性と2つの性質があります。
水性のものは1液型が多く、溶剤は水で大丈夫なためニオイが少ないです。価格は油性のものと比較して同グレードであれば安く耐用年数は劣ります。
一方、油性のものは1液型と2液型がバランスよくあり、溶剤はシンナーを使うためニオイが強くなります。弱溶剤型と通常の溶剤型があり、弱溶剤型の方がシンナーのニオイを抑えらえます。
同じグレードの塗料では水性と比較して耐久性に優れますが、価格は高くなります。
ただ、最近では水性でも様々な機能が付与され油性の差を埋めるほどの塗料も登場しており、ニオイが少なく近隣の方に迷惑をかけにくいことから水性を選ぶケースが増えています。
外壁塗装の塗料の選び方
分類 | 塗料種類 | 判断要素 |
---|---|---|
樹脂 | アクリル ウレタン シリコン フッ素 | 耐用年数 価格 |
機能 | ラジカル 遮熱・断熱 光触媒 無機など | 欲しい機能があるか 業者の信頼性 耐用年数 価格 |
伸び | 弾性あり 弾性なし(通常塗料) | 外壁材との相性 |
使用方法 | 1液型 2液型 | 耐用年数 価格 業者の信頼性 |
光沢 | ツヤあり 3分、5分、7分ツヤ ツヤなし | 外観の好み 耐用年数 |
顔料 | 数十色のカラー 無色 | 外観の好み 耐用年数 |
性質 | 水性 油性 | 耐用年数 価格 施工時のニオイ |
外壁塗料の分類、種類と判断要素を表にまとめました。
ベースとなる判断ポイントはやはり予算と耐用年数。次いでデザイン面や必要な機能があるかを見ていくのがいいでしょう。
機能が付与された塗料や2液型の塗料については職人さんの腕が試される部分がありますので、信頼できる工務店・塗装店に依頼するのが重要になってきます。
予算と耐用年数に合わせた選び方
予算と耐用年数は反比例する関係です。基本的に単価が高ければ耐用年数が高く、単価が安ければ耐用年数も低くなります。
例えば、2階建3LDK30坪の家だった場合30坪=約99.17㎡なので、2,500円/㎡のシリコン塗料を塗った場合、2,500円×99.17㎡=247,925円です。
塗料の価格以外にも足場代、人件費、材料運搬などその他の費用があり、塗料は外壁塗装全体の価格の2〜3割です。
仮に、塗料の価格が2割5分とした場合、247,925円×4=991,700円です。
耐用年数が長いものを塗れば長い目で見たときに足場代や人件費代がかかる回数を減らすことができます。そのため、予算に余裕があるのであればグレードの高い塗料を塗った方がコストパフォーマンスは高くなります。
デザインに合わせた選び方
色合いやデザイン、外観の雰囲気で外壁塗装を選ぶ方も多いと思います。やはり、ご自身の好みにあった外観は気持ちが高まり人生の質が高まりますよね。
デザインを重視するのか、耐久性も加味して選ぶのかが1つのポイントです。
先ほど塗料の分類でお伝えした部分ですが、デザイン面ではツヤのありなしや塗料の色で日光を反射する力が違い、耐久性や熱の影響を受けやすくなるかが変わってきます。
黒でツヤなしが一番日光の影響を受けやすくなるためそのような選択をするものの、気候の変化にできるだけ影響されず快適に過ごしたいとお考えでしたら、断熱・遮熱機能を持った塗料を選ぶのも1つです。
ご家族の状況に合わせた選び方
外壁塗装の塗料はご家族の状況によっても選び方が変わってきます。
例えば、世帯にお住まいの方が3世代に渡っているとお部屋の数が多く電気代が高くなるケースがあります。電気代が高い場合、断熱・遮熱塗料には夏に室温が高くなるのを軽減し電気代を節約する効果がありますので、状況に合っています。
他にも、いずれ住み替えを検討しているものの、外壁塗装をする場合は、あえて耐用年数が短く安く済むウレタンやアクリル塗料を選ぶなど状況に合わせて適切な塗料は変わってきます。
外壁や屋根の状況に合わせた選び方
外壁材や屋根材との相性や劣化度合いによって塗料の選び方は変わってきます。相性については扱っている塗料にも限りがあるため、工務店の方と相談して決める方がスムーズに進むでしょう。
相性については例えば、外壁材がモルタルやコンクリートなどの場合、弾性が低い塗料は向いていないため弾性機能を付与したタイプを選んだ方が耐久性の面でメリットが大きくなります。
他にも外壁より屋根の方が天候の影響を多く受けるため耐用年数が短くなるのですが、屋根の方にグレードが高い塗料を使い、外壁に一つ下のグレードを使うなど耐用年数を揃えるなどの選び方があります。
このように外壁や屋根の状況によっても塗料の選び方は変わります。
地域に合わせた選び方
日本は地域によって気候などの特性に違いがあるため、適切な塗料が変わります。
例えば、断熱・遮熱塗料は日射量が少ない日本海側の地域や寒い東方・北海道などでは効果を発揮しづらいです。
また、塩害が強い海沿いの地域であれば耐久性が高いフッ素塗料が向いています。
他にも、工業地域にお住まいであれば、薬品汚染に強いウレタン塗料を選択肢に入れたり、空気を浄化する機能がある光触媒塗料などがマッチする可能性があります。
まとめ
外壁塗装の塗料には様々な分類・種類があります。
基本的な分類である樹脂ベースと機能ベースの塗料の特性を理解して、細かい部分は工務店の方と相談すると失敗が少なくなります。
ご自身の状況や外壁材・屋根材の種類、お住いの地域によってマッチする塗料は変わりますので、人気ランキングやおすすめを安易に鵜呑みにせず塗料の特性を理解した上で適切な選択なのか考えることが重要です。
この記事が後悔のない外壁塗装をするための一助となりましたら幸いです。