外壁塗装工事は、
- 様々な工事の種類(工種)が混ざっていること
- 工期が約2週間前後と長期に渡ること
などから、トラブルが発生しやすい工事です。
また、トラブルは施工中に限らず、施工前や施工後にも起こります。
基本的にトラブルが起きた場合は業者さんに対応してもらうことが多いのですが、その業者さんとのトラブルも多々あることから、お客様(発注者)が直接対応する必要が出てくることもあります。
そうなった場合に備えて、事前にどのようなトラブルが考えられるのかを把握しておく必要があります。
この記事では、
- 施工前に起きるトラブル
- 施工中に起きるトラブル
- 施工後に起きるトラブル
と3つ分けて、それぞれについてトラブル事例10選とともに、原因や予防策、対処法をご説明します。
トラブルは起きないに越したことはありませんが、トラブルの予防策や対処法を知り、万が一トラブルが起きた場合でも対応できるようにしましょう。
- 契約時のトラブルを避けるためにはすぐに契約しないことが大切
- 施工時のトラブルを避けるためには契約前に細かな内容の打ち合わせをしておくことが大切
- 施工後のトラブルで一番多いのは色がイメージと違うこと
外壁塗装施工前に起きるトラブル
まずは外壁塗装施工前に起きるトラブルをご紹介します。
代表的なトラブル事例としては、
- 契約を取り消したい
- 契約を交わしたのに工事が始まらない
があります。それぞれについてご説明します。
契約を取り消したい
こちらは訪問営業(悪徳業者)などに騙されて契約してしまった際の事例です。
訪問営業(悪徳業者)などに、不安を煽られその場で契約してしまったものの、後日冷静に検討したら、
- 実施する必要がなかった
- 他社の方が安くて信頼できる
といったことが発覚し、既に契約しているが契約を取り消したい、というトラブルがあります。
原因
原因は費用相場を確認せず、すぐに契約してしまうことが原因です。
訪問営業(悪徳業者)は不安を煽り、すぐに契約するよう促してきます。言葉巧みな話し方で信用させ、冷静に判断する時間を与えません。
訪問営業はすべてが悪徳業者ではありませんが、まずは疑いから入りましょう。
事前の対策や予防策
訪問営業(悪徳業者)の詐欺の手口は、
- キャンペーンなどの特別感を出す
- 不安を煽る
- すぐに契約を求める
- 前払いを求める
などがあります。
まずはすぐに契約したり、前払いすることは絶対に避けましょう。不安を煽られても動揺せず事前に劣化調査を実施し、現状の劣化状況を把握した上で検討することが大切です。
また、外壁塗装の費用相場を事前に把握しておけば、見積内容を見れば高いか安いかの判断ができます。
参考として外壁塗装の費用相場をお伝えします。
工種 | 費用相場 |
---|---|
足場 | 700円~800円/㎡ |
高圧洗浄 | 100円~300円/㎡ |
下地処理(コーキング) | 500円~1,200円/m |
下地処理(ケレン) | 500円~1,000円/㎡ |
下塗り | 600円~1,000円/㎡ |
中塗り・上塗り | 1,800円~2,000円/㎡ |
全部含めた金額(2階建て・40坪) | 約100万円~150万円 |

対処法
対処法としては、
- まずは業者に相談する
- クーリングオフ制度を活用する
- 相談窓口に連絡
などがあります。
まずは業者に契約を取り消したい旨、話をします。
応じてくれない場合は『クーリングオフ制度』や『相談窓口』に連絡しましょう。
クーリングオフ制度について詳しくは消費者庁のクーリングオフ制度をご参照下さい。
https://www.caa.go.jp/publication/pamphlet/pdf/info_pamphlet_171115_0001.pdf
※クーリングオフ制度を活用するには一定の条件がありますのでご注意下さい
相談窓口については、消費者ホットライン118(いやや)に相談しましょう。
相談窓口は以下の表の通りです。
相談窓口 | 電話番号 | 営業時間 |
---|---|---|
消費者ホットライン | 局番なしの118 | 24時間 |
住宅リフォーム・紛争処理支援センター | 0570-016-100 | 10:00~17:00(土日祝日と年末年始を除く) |
契約を交わしたのに工事が始まらない
契約を交わしたのになかなか工事が始まらないことがあります。
特に雨漏りのような緊急性の高い工事であるにもかかわらず、着工日が決まらないというトラブルが発生すると大変困ることになります。
原因
原因として考えられるのは、業者が繁忙期のため職人さんの都合がつかないことや、単純に段取りを忘れている可能性があります。
事前の対策や予防策
契約を交わす前に繁忙期の時期を確認しましょう。雨漏りなどで急いでいる場合、すぐに着工日できない業者との契約は避けることが肝心です。
また、契約書には必ず『契約工期』を記載してもらいましょう。
※基本的に契約書には『契約工期』の記載があります
対処法
まずは業者に連絡します。契約書に契約工期の記載があれば、工期を遵守するよう強く求めましょう。
それでも応じない場合は、先ほどお伝えした『相談窓口』に連絡するのも1つの方法です。
外壁塗装施工中に起きるトラブル
外壁塗装施工中に起きるトラブルをご紹介します。
代表的な事例としては、
- 近隣住民から騒音や飛散物でクレームが入った
- 車などに塗料が付着した
- 予定工期より大幅に短縮して工事が終わった
- 工事途中で業者が倒産して逃げてしまった
などがあります。それぞれについてご説明します。
近隣住民から騒音や飛散物でクレームが入った
外壁塗装は足場を設置したり、高圧洗浄を実施するなどして、近隣住民に影響を及ぼす可能性が多くある工事です。その中で多くある事例は、
- 騒音がうるさい
- 飛散物が飛んできた
などが挙げられます。
原因
騒音については、特に足場の設置や解体時に発生します。
足場同士が接触すると『ガシャンガシャン』という不快になるような騒音が発生します。これは職人さんが作業を早く進めたいがために、足場材を投げたりすることが原因です。
飛散物については、高圧洗浄する際に飛散養生をしっかりしていなかったことが原因で、高圧洗浄で使った水や既存の塗膜などが近隣住戸へ飛散することで発生します。
また、足場解体時に足場上のゴミを清掃せずそのまま解体してしまうと同じく飛散の原因となります。
事前の対策や予防策
契約を交わす前に、業者さんに下記内容をお願いしましょう。
- 近隣住民へ事前に挨拶してもらう(騒音や飛散物発生の可能性を伝える)
- 足場材を静かに置いてもらうことや足場解体前の清掃、飛散養生の徹底
場合によっては、お客様(発注者)ご自身で近隣住民へ挨拶するのも1つの予防策です。
対処法
近隣住民からクレームがあった際は、時間を置かずすぐに謝罪に伺うよう業者さんに依頼しましょう。
今後の近隣住民とのお付き合いも考え、お客様(発注者)が直接伺うのも1つですが、デリケートな問題なので逆効果になる可能性もあります。
今までの近隣住民との付き合い方からどうすればいいか適切に判断する必要があります。
車などに塗料が付着した
外壁塗装は当然塗料を使用しますので、施工中に車など施工範囲外の場所に塗料が付着する可能性があります。
原因
ローラーで塗料を塗る際に、職人さんが早く作業をするために転がすスピードを早くしていまい、飛散した塗料が付着するケース、強風時の作業で飛散するケースが考えられます。
また、作業中に使用した塗料が作業着に付着し、その作業着が車に当たったことで付着してしまうこともあります。
事前の対策や予防策
作業前に業者さんへ下記内容をお願いしましょう。
- ローラー使用時は飛散しないよう丁寧に作業すること
- 強風時は作業を中止すること
- 飛散の可能性があれば車などにも養生すること
- 作業範囲外でも気をつけて歩行すること
車の養生はビニールシートで養生することが多いのですが、養生したことにより傷つく可能性もゼロではないため、場合によっては、事前に車を移動する必要があります。
対処法
車に塗料が付着してしまった場合、すぐに気づいて拭き取れば問題ありませんが、時間が経ってからでは簡単に拭き取れません。
業者さんによっては、シンナーを使って拭き取ることがありますが、既存の塗料が剥げてしまう可能性があるため、事前に控えるようにお話しておきましょう。
塗料が付着した場合は、まず業者さんに連絡し、車の補修業者に直してもらうよう依頼しましょう。
予定工期より大幅に短縮して工事が終わった
予定工期より大幅に短縮して工事が終わってしまうことがあります。
そもそも予定工期を長く見ることはありますが、例えば予定工期の半分で終わってしまった場合は、手抜き工事の可能性があり注意が必要です。
原因
原因としては以下のことが考えられます。
- 予定工期を長く見すぎていた
- 手抜き工事をした
業者の言い訳として「夏場の作業で早く乾燥したので早く終わりました」と言われることがありますが、夏場に実施することはわかっていたことなので、理由には値しません。
事前の対策や予防策
事前に下記の内容を業者さんへお願いしましょう。
- 予定工期は季節に応じた工期を設定すること
- 塗料の乾燥時間は必ず守ること
特に乾燥時間は必ず守るように強くお願いしましょう。塗膜の剥がれやピンホールなどの原因に繋がります。
対処法
対処法としては、今後の剥がれやピンホールが起きた場合、保証範囲内で手直ししてもらえるのかどうか業者さんに確認する必要があります。
保証書の内容を確認し、必ず保管しておきましょう。少しでも剥がれやピンホールなど不具合が確認できたらすぐに業者さんに連絡し、手直ししてもらいましょう。
工事途中で業者が倒産して逃げてしまった
こちらの事例はあまりないことですが、工事途中に業者が倒産して逃げてしまうことがあります。
原因
原因は業者の資金繰りが悪かったことです。
事前の対策や予防策
契約する際に前払いを求めてくる場合、業者の資金繰りがよくないと疑う必要があります。
倒産する可能性がありますので、前払いしないことはもちろん、契約してはいけません。また事前にホームページなどで会社の規模や実績などを確認し、信頼できる業者かを事前に確認しましょう。
対処法
もし前払いしたにも関わらず倒産して逃げられた場合は『相談窓口』に連絡し、刑事訴訟も視野に入れましょう。
外壁塗装施工後に起きるトラブル
最後に施工後に起きるトラブルをご紹介します。
代表的な事例としては、
- 外壁の色がイメージと違った
- 塗装が色褪せたり剥がれてきた
- 見積金額より多く請求された
- 不具合が発覚し業者に連絡したが倒産していた
などがあります。それぞれについてご説明します。
外壁の色がイメージと違った
施工後によくあるトラブルの1つで、外壁塗装が完成して建物全体を眺めると「なんかイメージと違う」と思われることがあります。
原因
色を決める際、色見本のみで決めてしまうと外壁の色がイメージと乖離するトラブルが起こりやすいです。
また単純に業者さんが間違った可能性も考えられます。
事前の対策や予防策
色を決める際は、色見本だけで決めるのではなく、サンプル帳など大きい面積の板に塗ってもらい建物全体をイメージして決めましょう。
また、施工中に色の違いがわかった場合はすぐに業者さんに連絡しましょう。
色の違いは早く気付くに越したことはありません。施工後だと全部塗り直しの可能性が出てくるため、さらに倍の工期がかかってしまいます。
対処法
まずは決めた色と合っているか確認します。決めた際の色見本やサンプル帳を実際に塗った外壁と照らし合わせて下さい。人によっては大きい面積で見た場合、薄くなったように感じられる方がいます。
実際に塗った色が間違っていた場合は、塗り直しを依頼しましょう。
塗装が色褪せたり剥がれてきた
外壁塗装したばかりなのに色褪せや塗装が剥がれてくることがあります。
原因
こちらはほとんどの場合、施工中に原因があります。以下のことが考えられます。
- 膜厚が薄かった
- 乾燥時間が短かった
- 下地処理が不足していた
- 低いグレードの塗料を使用した
事前の対策や予防策
とにかく丁寧に作業してもらう必要があります。特に乾燥時間はしっかり守るよう業者さんに伝えましょう。
また、保証書の内容を確認しましょう。保証範囲や症状、期間を事前に頭に入れておくことによって業者さんと話がしやすくなります。
対処法
ほとんどの場合、施工中に原因があるため、まずは施工業者に連絡して現状を確認してもらいましょう。
また保証範囲内かどうかの確認をします。
- 保証書に記載がある症状であるか
- 保証期間内か
などを確認し、保証範囲内の場合は業者さんに手直ししてもらいましょう。
見積り金額より多く請求された
こちらは悪徳業者によく見られる手法で、見積り金額より多く請求されることがあります。
事前に承諾を得ることなく追加で工事を行い、その分の費用を請求してくるのです。
工事をしているならまだしも、してもいない工事の請求をしてくることもありますので、注意が必要です。
当然承諾していないので支払う必要はありません。
原因
そもそも訪問営業(悪徳業者)と契約を交わしてしまったことにあります。
事前の対策や予防策
大前提として訪問営業には疑いの目を持ちましょう。
もちろん訪問営業に来る業者がすべて悪徳業者ではありませんが、可能性があることを頭に入れておいた方がいいでしょう。
また、仮に契約する場合であっても、契約金額に対する工事範囲の確認と合わせて、契約金額以上の追加工事や追加費用が発生しないことを念入りに確認しましょう。
対処法
追加が発生する場合は、事前にお客様(発注者)の承諾を得ることとし、事前の承諾がなければ支払わない旨を伝えましょう。
事前に承諾していないのであれば、当然支払う必要はありません。毅然とした態度で拒否しましょう。
不具合が発覚し業者に連絡したが倒産していた
保証期間中にも関わらず業者が倒産してしまうことがあります。
全国展開している業者というより、地場の業者でたまにこのようなトラブルが起こります。
原因
原因は業者の資金繰りが悪かったことです。
事前の対策や予防策
ホームページなどで会社の規模や実績などを確認し、信頼できる業者かを事前に確認しましょう。
また『リフォーム工事瑕疵保険』に加入してもらうよう依頼しましょう。
リフォーム工事瑕疵保険の詳細は下記URLを参照下さい。
https://m.j-anshin.co.jp/enduser/service/reform/
リフォーム工事瑕疵保険はお客様(発注者)が加入するのではなく、事業者(施工業者)が加入する保険です。
リフォーム工事瑕疵保険に加入していれば、業者が倒産しても保証してもらえます。
対処法
リフォーム工事瑕疵保険に連絡し、保険金を請求しましょう。
また、リフォーム工事瑕疵保険に加入していなければ『相談窓口』に連絡するのも1つの方法です。
まとめ
外壁塗装工事は様々な工種が混ざっていることと、工期が約2週間前後と長期に渡ることなどから、トラブルが発生しやすい工事です。
トラブルは施工中に限らず、施工前や施工後にも起こります。
トラブルが起きた場合、まずは落ち着いて状況を把握し、施工業者さんや相談窓口等に相談した上で、適切な対処法を取りましょう。