外壁のカバー工法を検討中の方のために、費用相場やメリットデメリット、他の工法との比較などをまとめました。
- 「外壁のカバー工法が最善なのか知りたい」
- 「カバー工法の見積もりが適正価格か心配」
- 「メリットデメリットを理解した上で判断したい」
このようにお考えでしたら、本記事が役に立つはずです。
「外壁のカバー工法で失敗したくない!」とお考えでしたら、ぜひ最後までご覧下さい。
- 外壁のカバー工法の費用相場は100万円〜200万円
- 外壁のカバー工法に使える外壁材は基本的に金属系サイディング
- カバー工法での耐震性低下は軽微であるものの、内部の劣化は確認できない
外壁のカバー工法はどんな工事?
外壁のカバー工法がどのような工事なのか、詳しくお伝えします。
外壁のカバー工法の特徴

外壁のカバー工法を一言でお伝えすると、古い外壁の上に新しい外壁材を重ねて張る工事です。カバー工法は、重ね張り、重ね葺き(屋根の場合)などとも呼ばれますが、同じ意味です。
劣化して修理が必要な外壁の上に新たな外壁材を重ねることで、耐久性を上げて家の耐用年数を伸ばすことができる他、デザインを一新することができます。
カバー工法は、外壁の全体張り替えと比較される工事で、外壁全体の劣化に対処しなければならない場合に行われます。
張り替えと比べて、工事が安いものの、内部の劣化を放置することになるのが特徴です。
外壁のカバー工法の工程や工期
カバー工法の工事の流れ・工程は、足場を設置して、現在の外壁の上に新しい外壁材を打ちつける板を張り、壁同士の間をペーストで埋めるという流れです。
工期は、おおよそ2週間〜3週間ほどで張り替えよりは短く、外壁材を剥がさないので作業の音が比較的小さく済むことや、工事に家の中で生活することができます。
直貼り工法と通気工法の違い

外壁のカバー工法には、直貼り工法と通気工法の2種類があります。
現在では、外壁の上に直接新しい外壁材を張る直貼り工法ではなく、胴縁という下地材をつけて空気層を作り、外壁材を張る通気工法が主流です。
直貼り工法は、外壁内部に結露が起き、劣化を進めてしまう欠点があるため、近年採用は減っています。そのため、通気工法ができる業者を選ぶことが大切です。
外壁のカバー工法による工事が必要な状態は?
そもそも、自宅に「外壁のカバー工法を行うべきなのか」と感じている方もいるかと思います。
外壁のカバー工法が必要な状態の目安は、外壁のひび割れや反り、剥がれなどが進んでいる状態です。
ただ、劣化状態が深刻だと内部の修理が必要になるため、カバー工法でなく張り替えしか選択できない状態であることもあります。
酷い劣化状態の目安としては、窯業系サイディングの場合は腐食や崩れ、金属系サイディングの場合は酷い錆や穴が空いている状態、モルタルの場合は外壁の崩れが目安になります。
外壁のカバー工法の費用相場
費用項目 | 費用相場 |
---|---|
足場 | 約15万円 |
胴縁組み | 約10万円 |
新しい外壁材 | 約105万円 |
シーリング | 約6万円 |
雑費(部材運搬費や経費など) | 約13万円 |
合計 | 約150万円 |
こちらが一般的な30坪弱2階建てのご自宅の外壁のカバー工法の費用相場の表です。外壁のカバー工法の費用は、30坪弱で150万円前後が相場です。
雑費については5%〜10%ほどとしている業者が多く、項目を作らず、他の費用単価を上げて調節する業者もいます。

外壁のカバー工法の坪数別の費用相場
坪数 | 概算外壁面積 | 概算費用 |
---|---|---|
20坪 | 73㎡〜86㎡ | 約126万円 |
25坪 | 91㎡〜108㎡ | 約143万円 |
30坪 | 109㎡〜129㎡ | 約154万円 |
35坪 | 128㎡〜151㎡ | 約167万円 |
40坪 | 145㎡〜172㎡ | 約178万円 |
45坪 | 164㎡〜193㎡ | 約195万円 |
50坪 | 182㎡〜215㎡ | 約212万円 |
こちらが外壁のカバー工法の坪数別の費用相場の表です。
坪数が増えると、外壁材などの使用面積が増えるため、比例して費用も上昇します。
ご自宅の坪数や見積書の外壁面積などと比較して費用相場の目安としてご確認いただけましたらと思います。
外壁のカバー工法で使う外壁材の種類と特徴や費用相場
外壁のカバー工法では使うことができる外壁材が限られており、金属系サイディングが使われることがほとんどです。
外壁材のシェアの約7割を占めている窯業系サイディングは基本的に使われません。
これは、窯業系サイディングは重量があるため、カバー工法を行うと建物の耐震面に問題が出る可能性があるためです。
金属系サイディング
金属系サイディングには、ガルバリウム鋼板、エスジーエル鋼板、アルミなどの種類があります。
外壁のカバー工法に使われる理由は、金属系サイディングは重量が軽く、地震の時に建物にかかる負担が少なく、耐水性や断熱性も備えているからです。
金属系サイディングの費用相場は、5,000円〜7,000円/㎡ですが、デザインが凝っていたり、凹凸が深いものだと材料の面積が増えるため、10,000円/㎡を超えるケースもあります。
また、金属系サイディングには、大きくわけて縦張りと横張りがありますが、縦張りの方が手間がかかるため、1,000円/㎡ほど単価が上がります。
金属系サイディングの中では、ガルバリウム鋼板が使われることが多く、耐久性と価格のバランスに優れています。
エスジーエル鋼板は、ガルバリウム鋼板の改良版で、新しい素材です。錆に強いため、海が近い家ならメリットが大きい素材です。
アルミは、ガルバリウム鋼板が使われる前によく使われていた素材で、軽くて錆に強いのが特徴ですが、価格が高いため、近年ではガルバリム鋼板の方が使われるようになっています。
樹脂系サイディング
樹脂系サイディングは、軽い素材でカバー工法に使われることもありますが、デザインが単調で、断熱性が劣る点や、扱える職人さんが少ないことからあまり使用されることがありません。
樹脂系サイディングに費用相場は、8,000円〜10,000円/㎡です。
外壁のカバー工法のメリット
外壁のカバー工法のメリットは以下の通りです。
それぞれのメリットについて詳しくお伝えします。
張り替えより費用が安い
外壁全体を張り替える場合の費用相場が、30坪でおおよそ200万円〜250万円であるのに対して、カバー工法の費用相場は100万円〜200万円と費用が安く済むのがメリットです。
工事期間が短い
外壁の全体張り替えの工期が3週間〜4週間なのに対して、外壁のカバー工法は工期が2週間〜3週間と短いのがメリットです。
ただ、工期はご自宅の状況や部材の運搬がスムーズにできるかなど近隣の住環境にも影響を受け前後しますので、参考までにご覧いただけましたらと思います。
断熱性や遮音性が高くなる
外壁のカバー工法を行うと、今までの外壁より厚みが出るため、熱や音が伝わりにくくなるメリットがあります。
積雪地域にお住まいで断熱性を確保したかったり、線路沿いや道路沿いにお住まいで遮音性を高めたいと考えている方にとってはメリットが大きくなります。
アスベストがある外壁でも撤去費用がかからない
外壁にアスベストが含まれている場合、撤去費用が20万円以上かかってしまいます。
全体張り替えを選択した場合、撤去費用が発生してしまいますが、カバー工法であればアスベストの撤去費用が発生しないため、金額を抑えられるメリットがあります。
外壁のカバー工法のデメリット
外壁のカバー工法のデメリットは以下の通りです。
それぞれのデメリットについて詳しくお伝えします。
内部の劣化度合いがわからない
外壁のカバー工法の一番のデメリットとなるのが、既存の外壁の上から新しい外壁材を重ねる工事なので、内部の劣化状態を確認できないところです。
そのため、カバー工法を行ってからあまり時間が経たないうちに雨漏りが起こるなどした場合、外壁の張り替えが必要になり、高い費用を支払うことになるというケースも考えられます。
次のメンテナンス費用が高くなる
外壁のカバー工法を行った後に張り替えを行うとなると、外壁材を2層分剥がさないといけなくなります。
剥がす手間はもちろんですが、部材の処理にもお金がかかるため、費用はカバー工法を行っていない外壁と比較すると高額になります。
耐震性が下がる
外壁材を重ねるカバー工法では、若干ではありますが、耐震性が下がります。これは建物は軽い方が地震の時にかかるエネルギーが軽くて済むからです。
外壁材を新たに重ねると外壁の重さが増し、地震の時に外壁や建物全体にかかる負荷が大きくなります。
軽い金属系のサイディングを使うことがほとんどなので、問題になるほど大きく耐震性を劣化させるわけではないものの、地震が心配な方にとってはデメリットになります。
利用できる外壁の材質が限られる
既にお伝えしていますが、カバー工法で使われる外壁材は重さの兼ね合いから金属系サイディングがほとんどです。
窯業系サイディングと比較すると外観のバリエーションは少なくなるため、様々な外壁材の中から好みのデザインを選びたいと考えている方にとってはデメリットになります。
外壁のカバー工法と他の工法の比較
こちらがカバー工法と他のメンテナンス方法のおおよその費用相場を比較した表です。
外壁の劣化状態が軽微な場合は、塗装によるメンテナンスや、一部張り替えで対応できる可能ではありますが、全体的な劣化の場合は、カバー工法か全体張り替えの2択になります。
全体張り替えのメリットは、外壁内部の劣化状態が確認でき、修理が可能なところです。また、カバー工法では使うことができない窯業系サイディングが使用でき、外観の選択肢が広くなります。
そのため、費用面で問題がなく、カバー工法の方がメリットがでる状態でなければ、外壁の全体張り替えを選択した方が、長い目でみるとご自宅のためには良いことが多いです。

外壁のカバー工法が適しているケース
外壁のカバー工法が適しているケースがこちらです。
- 3階建てである
- 隣家との距離が近い
- 塩害や積雪などがある地域
- 防音機能を上げたい
- 費用を抑えたい
- 内部劣化の可能性が低い
- 外壁にアスベストが含まれている
3階建ての場合、足場代が高くなるのに加えて、外壁材の処理も2階建てと比較して大変です。費用が通常より高くなるため、予算が少ない方にとっては比較的安いカバー工法の方がマッチします。
隣家との距離が近いケースは、外壁材を剥がす作業が困難なケースや、工事音の問題などからカバー工法の方がマッチするケースです。
塩害や積雪、防音機能については、カバー工法のメリットである耐久面や断熱・防音機能の効果が大きいケースです。
内部劣化の可能性が引くくコストを抑えたい場合、外壁にアスベストが含まれている場合など費用面のメリットが大きく感じられるケースでは、外壁のカバー工法が適しています。
外壁のカバー工法で失敗を避けるためには?
外壁のカバー工法で失敗を避けるために必要なのは、外壁内部の劣化が進んでいない状態であることが条件です。
明らかに劣化が酷い状態であれば、張り替え一択になりますが、判定が難しいケースもあるため、複数の業者に見てもらうことが失敗を避けることに繋がります。
相見積もりをとることで、セカンドオピニオンのように多角的な視点からご自宅を見てもらうだけでなく、費用面でも利益を大きくのせた相場より高い見積もりが出てくる可能性が下がります。
また、カバー工法での失敗を避けるためには、そもそもカバー工法を選択しないという方法もあります。
既にお伝えの通り、カバー工法は次に張り替えする際に外壁材を取り除く手間が2倍かかり、費用がかさみます。
カバー工法は、費用が張り替えと比較して安く、工期が短く住みながら工事を行えるなど、業者側からしても提案しやすい工事である一方で、のちのちのメンテナンス性を大きく損なう工事です。
そのため、ご自宅の状況が先ほどお伝えしたカバー工法が適しているケースに当てはまらない場合、外壁の全体張り替えを行った方が良いです。
まとめ
外壁のカバー工法の費用相場は100万円〜200万円ほどで、基本的に金属系サイディングを使います。
耐震性は大きく低下しませんが、内部劣化が確認できなかったり、その後のメンテナンス性を大きく損なうなどのデメリットが存在します。
費用を抑えることができるのはメリットですが、先々家全体の取り壊しを考えているわけではなく、アスベストや塩害、近隣の住環境などカバー工法が適している状態でなければ、張り替えの方がご自宅のためにはおすすめです。
カバー工法を依頼する場合、相見積もりサービスを利用することで、業者を探す負担を抑え、競争原理が働き費用面でも安く依頼できるため、ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。