外壁塗装を成功させるために重要な下地処理の作業の1つに『ケレン作業』があります。
下地処理作業の中でケレン作業はほとんどの外壁塗装において実施する必要があり、非常に重要な工程です。
※基材の劣化状況によっては高圧洗浄のみということもあります。
ケレン作業は、どういう作業なの?
ケレンは、そもそも必要なの?
費用はどれくらいが相場なの?
などの疑問があるかと思いますが、疑問をすべて解決いたします。
外壁塗装のケレン作業について知りたい方はぜひご覧下さい。
- ケレン(作業)は、汚れを取り除く作業
- ケレンは、塗装の寿命に大きく影響しているため必要
- ケレンの費用相場は、30坪で70,000円〜120,000円が目安
ケレン作業とは
ケレン作業とは、一言でお伝えすると『塗装する場所の汚れを取り除く作業』のことで、『素地調整』や『下地調整』と言われることもあります。
語源は英語で綺麗にするという意味の『clean(クリーン)』で、訛ってケレンになりました。
剥げかけている塗膜や鉄部のサビ、汚れなどを除去し、平滑(へいかつ=凸凹がなく平たく滑らかな状態)にする目的があります。
道具は、状態によって使うものが異なり、ディスクサンダー・紙ヤスリ・皮すき・スクレパー・ワイヤーブラシなどを使用します(のちほど詳しく解説します)。
塗料が付着しにくいガルバリウム鋼鈑の屋根や壁には、わざと細かいキズをつけてザラザラにし、塗料が密着しやすいようにする場合があります。
ケレン作業が必要な理由は?重要性を解説
ケレン作業が必要な理由を一言でお伝えすると、外壁塗装の寿命に大きく関係するからです。
要因 | 寄与率 |
---|---|
素地調整 | 49.5% |
塗回数 | 19.1% |
塗料の種類 | 4.9% |
その他(技術、気候など) | 26.5% |
こちらは『素地調整が異なる塗装鋼板の腐食劣化に関する基礎的研究』という論文に掲載された表を元に作成した表です。
素地調整=ケレンは、鋼板の場合、塗膜の寿命の49.5%と約半分弱の影響があることがわかっています。
論文は、鋼橋を対象としたものであり、外壁に鋼板が使われている場合や、サイディングなど鋼板以外の素材が使われている場合に同じ寄与率が出るとは限りません。
ただ、ケレン作業が十分に行われていない場合、塗膜の寿命が短くなることは、研究によって相関関係が強いことが示唆されています。
ケレン作業がしっかりできていると仕上がりにどのような影響があるのか、具体的にお伝えします。
塗膜が長持ちする
いくら高級で耐久性のある塗料を塗っても、下地に汚れやサビが残った状態で塗ってしまうと、下地と塗膜の密着性が保てず、塗料本来の耐久性が発揮できません。
特にサビが残った状態だと塗膜の下でサビが大きくなり、塗膜を破って表面に出てきます。そうなると再度サビを落として塗り直さないといけません。
一方で、しっかりケレン作業をすれば密着性を保つことができ、塗膜が長持ちすることに繋がります。
ケレン作業は、塗膜の密着性を保ち、塗料本来の耐久性を発揮させるために重要。
凹凸がなくキレイな仕上がりになる
剥げかけている塗膜や鉄部のサビをケレンしないで塗ってしまうと、その部分に段差がついてしまい、密着性だけでなく見た目が非常に悪くなります。
小さい段差でも日が当たり影になると、明らかな段差がわかるため、補修した跡が残り綺麗ではありません。
一方で、しっかりケレンして平にすることにより、仕上がりが滑らかで綺麗になります。
段差を目立たなくするため『パターン』というあえて凹凸をつける工法がありますが、それでも下地の段差が目立つこともあるため、しっかりケレンし平滑にする必要があります。
ケレン作業の種類と費用相場・単価
ケレンの種類 | 費用相場/m2 | 劣化状況 | 使う道具 |
---|---|---|---|
1種ケレン | 4,500円~6,000円 | 腐食、サビなど劣化が激しい | バキュームブラスト機など |
2種ケレン | 1,300円~2,000円 | 外壁の錆がひどい | ディスクサンダー、スクレーパー、ワイヤーブラシなど |
3種ケレン | 500円~1,000円 | 比較的軽微な汚れ、塗膜の剥がれ | スクレーパー、皮すき、紙ヤスリなど |
4種ケレン | 200円~400円 | 少ないものの汚れがある状態 | 紙ヤスリ、ワイヤーブラシなど |
こちらがケレン作業の種類と費用相場・単価、どのような劣化状況で行われるかをまとめた表です。
一般住宅では、2種ケレンか3種ケレンが行われるケースが多く、30坪二階建ての住宅では、70,000円〜120,000円が目安です。
ただ、部分的なケレンになる場合は、他の下地処理と合わせて、見積書で一式表記になることがあります。
ケレン作業にはいくつか種類があり、下地の状態によって使い分ける必要があります。
- どのような種類があるのか
- どのような仕様なのか
をそれぞれ詳しくに紹介します。
1種ケレン
1種ケレンは、腐食やサビ、汚れがかなりひどい場合に行われ、一般住宅ではまず使用しないケレン作業です。
『ブラスト工法』と呼ばれる強力な機械で研磨剤を吹き付け、塗膜やサビ、汚れを除去します。
強力な機械のため、騒音や飛散の問題があり、事前の近隣住宅へのあいさつや、飛散防止のシートを取り付けるなど配慮が必要になります。
1種ケレンの費用相場は、4,500円~6,000円/m2です。
2種ケレン
2種ケレンは、外壁のサビがひどい場合に行われ、一般住宅ではたまに使用される作業です。
ディスクサンダーやスクレパー、ワイヤーブラシなどを使用し、サビを除去します。
2種ケレンの費用相場は、1,300円~2,000円/m2です。
3種ケレン
3種ケレンは、比較的少ないサビや汚れ、塗膜の剥がれの場合に行われ、一般住宅でもっとも多く使用される作業です。
スクレパーや皮すき、紙ヤスリなど基本的に手作業で作業し、サビや汚れ、塗膜の剥がれを除去します。
3種ケレンの費用相場は、500円〜1,000円/m2です。
4種ケレン
4種ケレンは、サビや汚れがほとんどない場合に行われ、一般住宅でも使用される作業です。
電動工具はほとんど使用せず、ワイヤーブラシや紙ヤスリでちょっとした凹凸を除去する程度の作業です。
4種ケレンの費用相場は、200円〜400円/m2
ケレン作業に使われる道具
ケレン作業では、下地の状況により使用する道具が変わってきます。
サビの大小や既存塗膜の密着度合い、汚れの付着度合いなど、適切な道具を選定する必要があります。
どのような道具があって、どのような状況で使用するのか紹介します。
ディスクサンダー

ディスクグラインダーとも呼ばれる電動工具です。
工具の先端に円盤上の『といし』と呼ばれるものが装着されており、それを高速回転させることにより目標物を研磨することができます。
職人さん同士では『サンダー』と呼ぶことが多く、『といし』は消耗品になり都度交換が必要です。
2種ケレンで使われるように、酷いサビや広範囲をケレンする際に使用されます。
ディスクサンダーを使用するためには『研削といしの取替え等の業務に係る特別教育』という特別教育を受ける必要があり、労働安全衛生法で義務づけられています。
厳密に言うと『といし』を交換する際に必要となる特別教育ですが、使用する上では交換しますし、使用前には必ず締め付け確認をしますので、事実上使用する際に必要と言ってもいいでしょう。
※『研削といしの取替え等の義務に係る特別教育』を受けていない職人が作業した場合、処罰の対象になりますが、これはあくまで『請負業者』が処罰の対象となり、『発注者(お客様)』が処罰されることはありません。
ディスクサンダーを使用する場合、業者さんに「ディスクサンダー使うときって資格が必要なんですか?」と聞いてみて「研磨といしの特別教育を受けた職人が作業します」と言われれば、しっかりした業者さんだという見極めポイントになります。
紙ヤスリ

紙ヤスリは、研磨紙・サンドペーパーとも言われ、手作業で使用する道具になります。砂やガラス質の粒、砥粒や研磨材を塗布した紙です。
比較的薄く研磨する際に使用し、耐久性には劣るため、使い捨てのような使用方法となります。
目の粗さは『番手』と言われ『#』をつけた数字で表されます。その数字によって使用方法が異なります。
紙ヤスリの目の粗さ | 使用目的 |
---|---|
#40~100(粗目) | 塗装をはがす際に使用する |
#120~240(中目) | サビ落としの際に使用する |
#280~800(細目) | 塗装前や塗り重ねる際の下地処理に使用する |
#1000~(細目) | 金属の汚れ落とす際に使用 (外壁塗装で使用することはほぼありません) |
上記の表のように下地の状態によって使い分けます。
塗装の剥がれ具合やサビの大小によっても使うべき目の粗さが異なりますので、適切な番手を選定する必要があります。
皮すき

皮すきは、道具の先端が平たい鋭利な金属板がついており、手作業で使用する道具です。
平たい部分を使って塗膜を剥がす際やサイディングの目地材を取るときにも使用します。
また取手の根元部分にハンマーを打ち付けて、比較的密着性のよい塗膜も剥がすことができます。
スクレーパー

スクレパーとも言われ手作業で使用する道具です。
皮すきと似ておりますが、道具の先端にカッターの刃を取り付けることができ、皮すきより鋭利になっております。
塗装やサビを剥がしたりする際に使用します。
こちらも、取手の根元部分にハンマーを打ち付けて、比較的密着性のよい塗膜も剥がせます。
ワイヤーブラシ

大きな歯ブラシのような形をしており、取手がついた金属製のブラシです。
紙ヤスリでは届かない隙間や頑固なサビなどを取るのに使用します。
金属製のブラシなので、下地にキズがつきやすくなるため、紙ヤスリと併用して使われます。
ケレンハンマー

ケレンハンマーは、よくある金づちと同じような形状をしていますが、ハンマー部分の片側が特殊な形状になっています。
細く尖った方で細い目地の塗膜や汚れを除去し、角状になっている方で汚れを一気に削ぎ落とすことができます。
ケレン作業で優良業者を見分けるポイント
外壁塗装をする業者によっては手抜き工事をする業者も中にはいますので、業者を見分けることは非常に重要です。
これから業者を選定する上で、ケレン作業の視点からわかる良い業者の見分け方を、
- 見積もり内容
- 工事中
に分けてお伝えします。
見積り内容のポイント
業者が見積り作成する上では、必ず現地確認をする必要があります。
基本的に現地確認しないと概算でしか見積りを作成できないので、現地確認せずに正式な見積書を提出するようなことがあれば、その業者は信用できないと判断していいでしょう。
現地確認をした上で見積書を提出してきた場合、まず『ケレン作業』という記載があるかを確認します。
下地の状況によっては『高圧洗浄のみ』の場合もあります。
ケレン作業の記載がない場合
「なぜケレン作業がないのですか?」
と質問してみましょう。
業者の回答としては「下地状況が良好なので高圧洗浄のみで大丈夫です。」と言われると思いますので、次に保証期間の確認をします。
保証期間は塗料の種類によって異なりますが、平均で5年が多いです。
5年を越える期間を提示されれば安心して良いでしょう。
ただ、保証期間内に塗装の剥がれが起きた場合、よく言う業者の言い訳としては「下地と既存の塗膜の間で剥がれたため保証対象外です」と言われることがあるため、注意が必要です。
そうならないために、ケレン作業の際は既存の塗膜が浮いていたり剥がれかけている場合は、必ず除去してもらうよう強くお願いしましょう。
業者さんに言い逃れされないために、既存の塗膜はしっかり除去してもらう。
ケレン作業の記載がある場合
下地がどのような状態で、どのようなケレン作業をするのか確認しましょう。
お伝えした『ケレン作業の種類』の通りであれば問題ありません。
工事中に確認するポイント
工事を開始するとまず外壁周りに足場をかけます。
その後、下地処理の工程に移りますが、その際のケレン作業で確認する内容として、『下地と既存塗膜の浮きを確認しているかどうか』がポイントです。
浮いているかどうかの確認方法ですが、『打診棒・パルハンマー』と呼ばれる先端が丸くなっている棒を外壁に当てて転がし、音の違いで浮いているかどうかの判断をします。
このとき、塗膜浮いていなければ『重い音』、浮いていれば『軽い音』がします。
打診棒で確認している最中は家の中にいれば『カラカラ』と音がするので、その音で「確認しているんだ」と判断できます。
その後、浮いている場所を『マーキング』と言って、チョークなどで丸く印をつけます。
図面に転記しているようであれば、コピーをもらってもいいでしょう。マーキングの図面があれば、今後剥がれが起きた場合にケレンした場所を確認できます。
まとめ
下地処理の作業の一つである『ケレン作業』は、見た目には直接関係しませんが、密着性・耐久性において重要な作業です。
いくら見た目がよくてもすぐ剥がれるようでは全く意味がありません。
ケレン作業には、4種類あり、30坪2階建ての平均的な費用相場は、70,000円〜120,000円です。
ケレン作業の重要性を理解したものの、業者選びが不安という方は『優良リフォーム会社紹介サービス』を利用されてみてはいかがでしょうか。
この記事が外壁塗装をする上で少しでもお役に立てましたら幸いです。

